聞く力と話す力を伸ばすには
このコラムにおける「話せる/聞ける」の定義:おしゃべりとは別です。適切に『て/に/を/は/などのくっつく言葉を使用できる児童』を『話し上手』とし、『文末まで耳をかたむけることができる児童』を『聞き上手』とします。
「現地キンダーのシェアリングタイムでは上手に話せるのに日本語ではダメなんです。」というケースをよく観察すると…
ワースト3は:
➀Transformer=トランスフォーマー,Robot=ロボットなどの言葉の置き換えができない場合
➁(主に優しい日本人ママの)問いかけが
「○○なの?/▽△でしょう?」の形式で、
子どもは「No/Yes」の首振りだけでOK!
と、子どもが話すチャンスを奪っている場合
➂『正しいて・に・を・は・を!』と親が頑張りすぎて、子どもの自信を失わせたり日本語嫌いにしている場合
…が挙げられます。
同じ親が兄弟姉妹を差別なく育てても同じようには育たないのが子どもですから、補習校の一斉授業で児童の話す力に差が出るのは当然です。『みんな仲良く一等賞~(*'▽')』になれればいいんですけどね…『聞く力/話す力』は子どもの発達段階に開きが出やすく、家庭環境と音感に左右されると同時に個人学習では伸ばし辛い分野です。
一斉授業でこの分野の力を伸ばすには、➀手遊び,➁暗唱,➂カルタ取りが効果的でした。
➀手をたたきながら🎶「◎◎ちゃん」♪と、遊んでいるとしか見えない幼児期の手遊びこそ、他人(家族以外の人)の発声を聞くと同時に自ら発声して伝える訓練です。
➁日本語の発音と(七五調などの)リズムに慣れ親しませるには暗唱が最善の学習でした。
➂クラスのレベルに合わせて読み札の内容を変える読み手の力量次第ですが、最後まで聞かなければ正しい絵札を取れないのですから聞く練習になります。
タイミングよく相槌を打って会話を弾ませる技は大人になってから・・・日本語補習授業で大切なのは文末決定法を意識させることです。
例えば、バタ足板を手にした子らに先生は何と言っているのでしょうか?
・「今から一緒に泳ぎま(せん/しょう)。」
文末で話題が逆転するのが日本語の特徴で、英語とは全く異なります。
★せっかちも児童の個性と言ってしまえば補習のしようはありませんが、重要語句が文頭にくる英語に慣れた子にとって、文末まで耳を傾けるのは大変な作業なのです。日本語の文末決定法を念頭に置き、親と教師は文末までていねいに語り掛けることが大切です。
★「学ぶ」の語源は「まねぶ」で、親鳥の羽ばたきを見習う形から「習」の字ができました。
★親は子どもの話に最後まで耳をかたむける姿勢を示しましょう。してみせて、やらせることが教えるということです。言い聞かせて、話させることがジャパニーズ補習の基本です。
★ハイスクールでジャパニーズを始めても、イングリッシュの成績がいい生徒は第二言語でも高い成績を修めます。これに対して、耳が柔軟な幼児期から日本語補習を始める長所は発音と聞き取りです。せっかく幼児期から日本語補習をさせるのですから、RやLやThなど発音が混じらないように注意しましょう。
大人のアテンションが欲しくて「見て~!!」を連発する時期が日本語補習の最高のチャンスです。
ちょっと手が離れる年齢ですので親から見ればうるさいだけの「見て、見て!」攻勢ですが、興味の塊の6~7歳児に「あとでね」や「うるさいわねぇ」と言うことは厳禁です。
★耳が柔軟な幼児期にきれいな日本語や歌をたくさん聞かせましょう。
★カタカナ日本語は日本語の発音で教えましょう。
★子どもが(Yes/Noの首振りだけではなくて)答えやすい形の問いかけをして、その答えに最後まで耳を傾けましょう。
★まず親が、正しいてにをはを使って、ゆっくりはっきり話しかけましょう。
★「見て、見てぇ!」の時期:幼児から児童への成長期は、日本語を話す親が、自分の子どもを【話さない子】にしてしまう危険性が高いのです。
この時期を日本語補習のチャンスに変えましょう。
・英単語と日本語を結び付けましょう。
・「No/Yes」の首振りだけでは終わらない問いかけでおしゃべりを楽しく続けましょう。
・『正しいて・に・を・は』は、言葉の仲間分けができるようになる10歳前後で間に合います。
◎かしわ餅は
だれと一緒に食べたの?
(答えが続きそう)
×かしわ餅はおいしかったでしょう?
(答えは首振りで十分)
◎(クラスで作った物を手にして)上手にできたね。この作り方を教えて?
(笑顔で答えが続きそう)
×今日はどうだった?
(幼児の性格にもよりますが、共感がなく「べつに…」で途切れがち)
スマートフォン表示でご覧の方は【トップに戻る】から、右上の【目次】をご利用ください。