読む力を伸ばすには

このコラムにおける「読める」の定義:目で見て文節もしくは連文節(日本語として意味が通じるまとまり)を、読み通せることです。一斉読みや範読につられて声を出す動作は含みません。物語文の主題ならびに説明文の要旨の把握はここでは扱いません。



わかち書き

日本の教科書を使うと日本人の親は安心していますが(日本国内と同等かそれ以上の日本語力を備えていない限り)小2の3学期以降の国語の単元は、日本語補習に適していません。

どの出版社の小1の教科書も平仮名がならんでいます。平仮名だけの文は、語句と語句の切れ目がわかりにくく、意味も捉えにくいものです。語彙の乏しい新入児童には一語一語の判別も難しいでしょう。

上の図をクリックして拡大してご覧ください。平仮名だけが続く一行目:「いろいろ~」+「🎶お値段以上ニトリ🎵」から「いろいろナトリ」と読みたくなるような…。

5行目は「しない/する」の「する」+「毒グモと」から「する毒グモと」と読んでもよさそうな…。

そのため、どの小1の教科書も、一文字分のスペースを空けたり行を変えたりと、読みやすくて文意をとらえやすいように工夫されています。この表記が【分かち書き】です。教科書の分かち書きは、漢字数と語彙が増えて句読点の学習が済む小2までで教科書から姿を消します。

助詞の認知を目標とする【視写】においては【お手本通り(レベルにあった文節もしくは連文節区切りの分かち書き)】が効果的です。

絵日記など実際に児童が書く場合は句読点区切りで十分です。


くっつく言葉

分かち書きは読みを助けると同時に言葉に意味をそえる【くっつく言葉】の認識も助けます。

★ここで/はきものを/ぬぎましょう。

☆ここでは/きものを/ぬぎましょう。

漢字を使えば

★「ここで履物を・・・」
「ここでは着物を~。」と、簡単に解決できますが、幼児期から10歳前後の児童はまだこれらの漢字を習っていません。

「履く」+「物」→「はきもの」

言葉の塊の上にくる「は」は「ハ」と読んで、言葉の塊の最後にくっつく「は」は「ワ」と読むことを教えます。

助詞の働きが理解できるのは早くても4~5th以降で自立語と付属語の分類や助詞の働きの説明は教師の自己満足で終わりがちで、体験上最も効果的な日本語補習は【視写】と【て・に・を・は・等を正しく取り入れた語りかけ】でした。

視写

多くの保護者から不評#1の宿題が視写です。ところがこの地味で愛されない宿題を小2でやらされた学年とそうではなかった学年の差が小6で明確に現れました。視写のやり方はここを参照してください。

語彙の拡充

子どもの頭の中に【日本語の家】と【英語の家】があって、出入りする玄関は別々なのに、裏庭に大きな廊下があってしっかり連結している状態(英語は英語として、日本語は日本語として、ごちゃゴチャではなく識別された上で)しっかり結び付いた状態が理想です。それぞれの家(日本語/英語)が小さくて、両方を合わせても標準以下とい

うのがセミリンガルやダブルリミテッド(最初のページ【基本の木】の注釈参照)ですので避けてください。エレメンタリーの3rdや4thで日本語補習が足かせになるようなら一言語に絞る方がいいでしょう。

「日本語もやってるんだから英語が下手なのは当たり前…」という親の一言は危険この上ありません。


日本語であれ英語であれ、学習内容は似通っていますので、第一学習言語の語彙が豊富な生徒ほど第二言語もレベルが高くなることは書く力と同様です注※

【木】に例えれば、根と幹は耳が柔軟な幼児期に育まれた聞く力と話す力で、枝葉の部分が、語彙力を含む読み書きの力です。苗木から成木になるまで長い時間と世話を要するように、日本語補習にも手間暇が必要です。週に数時間だけの一斉授業という制約の中で、木の根と幹に当たる部分を育てるのに効果的な宿題についてはここをご覧ください。



AP準備コースの生徒にも、左の3行目から4行目は音読が難しい部分です。
・生活言語レベルのジャパニーズ学習児童生徒に文節区切りの「ネ/ヨ/サ」を入れさせるのは難しいのですが、それでもあえて、意味が通じるまとまりや、補助や並立の詳しくする部分を加えたまとまり意識させ、息の長さに合わせて繰り返し音読させることが大切です。
音読の繰り返しの中で下記の点を意識させましょう。
くっつきの「は」や「を」の確認。
「はげしい流れ」という言葉から、『さかのぼる=逆に上流に向かって泳ぐこと/「逆(さか,ギャク)」+「上(のぼ)る」の複合語』でることの確認。
逆(さか,ギャク:inverted; reverse; opposite; wicked)のように、漢字を表意文字としてとらえること。


注※『第一言語力が高ければ第二言語力も高くなる』という説の具体例は、ここをクリックしてください。

日本人の背景を持たず、ハイスクールに入ってから外国語としてのJapaneseを選択した生徒を対象とする『オーロラ日本語スピーチコンテスト』の動画です。このYouTubeに登場している女生徒たちのスピーチ原稿は直筆の手書きでした。


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